自分の疲労を解消するために
私の職業は、ボディワーカーです。何をする仕事かといえば、多くの人に「今、自分の体がどうなつているか」と気付いてもらい、体の自然なバランス能力である自己調整力を引き出すお手伝いをしています。一般的な運動やエクササイズでは、筋肉を鍛えたり、正しい体の使い方を学んだりしますが、ボディワークでは現状の体の状態に気付くことが大事です。
例えば、パソコンやスマホによる目の疲れを取るには、やみくもに点眼薬を使う前に、まず目の緊張に気付いてもらい、それを自自然治癒力で治すための身体技法をお伝えします。
そもそも、私が今の職業に就いたきっかけは、自分自身の疲れやすさにありました。大学を卒業後、政府系金融機関で政府開発援助(ODA)に勤めていたころのことです。
休日にテレビを30分見ただけで、頭がボーッとしてきます。街を歩いても、30分もたたないうちに休憩を取りたくなります。枕は10個以上持っていましたが、どれもしっくりこなかったため、安眠できません。
オフィスには、健康にいいという特殊なイスを二つ持ち込み、それをローテーションしながら勤務時間を乗り切っていました。
訳もなく、いつもひどく疲れていたのです。そうした経緯があり、私は仕事を辞め、疲労解消に役立つボディワークの研究にのめり込むようになりました。
中でも「
耳ひっぱり」は、私の慢性疲労の解消はもちろん、多くの人たちからも好評をいただいているものです。疲労の解消以外にも、目や肩の疲れ、肩こり、腰痛、背中の痛み、めまい、顎関節症、高血圧なども解消したという、うれしい声がたくさん届いています。
現代人は自律神経が正常に機能していない
私たちは日々、緊張とリラックスをくり返しながら生活してます。大事な仕事の場面では緊張し、自宅に帰ればリラックスする。そのバランスを取っているのが自律神経です。朝は気持ちよく目覚め、夜になると1日の疲れで自然と眠くなるのは、自律神経の自然な働きの1つの現れといっていいでしょう。
しかし、現代人はこのバランスがくずれています。日々の生活で昼夜問わず大きなストレスを受け、緊張とリラックスの切り替わりがスムーズにいかないのです。
興奮が収まらずなかなか寝付けなかったり、逆にこれから活動すべき場面でも体がゆるんで動けなかったりすることがよくあるでしょう。これでは、体の疲労が蓄積していくぼかりです。こうかん自律神経には、緊張の「交感神経」とリラックスの「副交感神経」の2種類があります。この2つが、アクセルとブレーキの関係のように、バランスを取りながら働くことが大事です。
特に副交感神経のうち、その大部分を占める「迷走神経」の働きが重要です。迷走神経は、脳から頭蓋骨の底を通り抜け、のど、胸を通り、おなかまで延びています。
実は、迷走神経が頭蓋骨の底を抜ける部分、つまり首と頭の境目は構造的に詰まりやすく、迷走神経の働きを圧迫します。しかし、この部分は体の奥にり、手で直接触れることはできません。この神経の通り道を広げ、働きをよくする方法こそが、耳ひっぱりなのです。
集中したいときにも耳ひっぱりは役立つ
迷走神経は、頭の側面にある「側頭骨」と後面にある「後東骨」の問の穴(頚静脈孔)を通り抜けます。耳は側頭骨に付いているため、外側にひっぱれば、側頭骨と後頭骨の隙間が減圧され、迷走神経の通りがよくなります。
耳ひっぱりを行うと、後頭部と首の境目辺りがフワッと広がり、呼吸がらくになるのが感じられるでしょう。
これがリラックスのサインです。耳ひっぱりは、疲れたときはもちろん、仕事に集中したいときにもお勧めです。リラックスすることで、その後は集中力を上げることができます。ぜひ試してください。