親父ギャグは難聴が原因のことも
40歳を過ぎれば、実は難聴や耳鳴りはだれにでも始まっている症状です。難聴になると、さまざまなコミュニケーションの不具合が生じます。
あなたの周囲にも、つまらないダジャレを連発する中高年男性がいるはずです。これも、難聴が原因の可能性があります。
脳は、聞き取れない音があると、記憶の中から似ている言葉を探す働きがあります。日ごろから聞こえが悪くなっていると、同音異義語を探す癖がつき、それがオヤジギャグの源泉になるのです。
ご主人がつまらないダジャレを連発するだけならば、周囲が少し我慢すればいいだけですが、難聴をそのまま放置すると、当人にはもっとやっかいな症状が出てきます。次の段階では、他人とコミユニケーションを取ることが面倒になったり、怖くなったりするのです。
その結果、次第に周囲から孤立し、やる気を失い、うつになる人も出てきます。難聴に気付いたら、できるだけ症状を進行させない工夫が必要です。そんな工夫の1つとして、私が患者さんに勧め、成果を上げているのが、「耳ひっぱり」です。聞こえをよくし、難聴の進行を防ぐ効果があるのです。
ほうれい線が濃いと耳も下がっている
年を取ると、ほおやお尻など、体の肉が垂れ下がってきます。あまり知られていませんが、耳の位置も低下し、耳の穴の形も変化してきます。
耳の位置は、1cm程度下がるといわれています。この影響で、赤ちゃんのころにはまっすぐだった外耳道は、途中で折れ曲がることになります。それと同時に、耳の穴のは、赤ちゃんのころはまん丸だったものが、加齢で扁平にひしゃげていきます。
つまり、音の通り道は折れ曲がり、音の入り口である耳の穴もいびつに狭くなるため、音が聴神経にストレートに伝わりません。この構造上の変化から、音が問こえづらくなるのです。ほうれい線がくっきりと出ている人は、耳が下がった結果と見ていいでしょう。
そんな人が耳ひつぱりを行うと、聞こえがよくなると同時に、ほおが上がってほうれい線が薄くなるアンチエイジングの効果も期待できます。
ひっぱるだけで聞こえは2倍になる
実際に耳ひっぱりをやってみると、音が大きく、クリアに聞こえるはずです。耳ひっぱりで耳の穴が大きくなり、外耳道もまっすぐになるからです。
耳ひっぱりでどれくらい聴力が回復するのか、実験したことがあります。鼓膜の前に小さなマイクを置いて聴力(耳の感度)を測ってみると、耳ひっぱりで通常3〜6db程度は上がります。
耳を上にひっぱると聴力が6dbアップしました。6dbアップとは、つまり聞こえる音の大きさが2倍になるということです。
後方に耳をひっぱると、4000 Hz以上の高い音の聞こえがよくなることも確認できました。
また、耳ひっぱりを行うと耳全体の柔軟性が増し、雑音を拾いにくくなります。加齢で耳が硬くなると、雑音を拾いやすく、聞き取りを悪化させるのです。
例えていえば、強風で勝手に開いたり締まったりしている硬い木のドアは大きな音を出します。これが柔らかなスポンジ製のドアならば音は出ません。
私自身は、リラックスするために就寝前、耳ひっぱりを必ず行っています。血行のよくなっている起床時や風呂上がりに行うこともお勧めです。
耳ひっぱりによる聴力アップの効果は、一時的なものかもしれません。しかし、毎日続けることで、耳と脳への音の刺激が習慣的になり、長期的な効果に変わっていきます。継続して行うことをお勧めします。
耳ひっぱりのやり方
- 両耳を中指と親指でつまむ。中指を耳のくぼみに入れ、親指は耳の後ろに添え、 2本の指で軽く挟む。
- ひじを軽く張るようにして、耳を斜め後ろ方向に軽くひっぱる。視線は、目の高さにある遠くの水平線を見ているイメージで。
- この姿勢を30 秒から1 分間保つ。1 日何回行っても構わない。