正しい姿勢ができている人は少数
人問はまっすぐ立っているとき、最も腰への負担が少ないといわれています。立った姿勢では、骨盤も立っているからです。
骨盤が立つと、その上にのっている背骨が、嬢やかなS字のカーブを描きます。重い頭を支えるとき、このS字のたわみがバネになり、腰への負担をバランスよく分散するのです。しかし、座った姿勢では、骨盤を立たせにくくなります。つまり、長く座っているだけで、腰には負担がかかるのです。まして悪い姿勢で座ったら、負担はさらに大きくなります。
例えば、背中を丸めたり、背もたれに寄りかかったりして座ると、骨盤が後ろに倒れ、仙骨で座る形になります。
この姿勢では、背骨が緩やかなC字になり、後ろに圧迫がかかります。その結果、骨と骨の問にある椎間板が変性する変形性脊椎症や、椎間板が後ろにはみ出す椎間板ヘルニアになりかねません。
反対に骨盤が前に倒れると腰痛が反ってしまい、これも背筋に負荷をかけて腰を痛める原因になります。
このように、悪い姿勢で座り続けると、背骨が本来のS字を保てず、背骨や靭帯、その外側にある筋肉にも負担がかかって腰を痛めてしまうのです。
特に高齢者や女性は、背骨を支えている筋肉が少ないので、痛みが起こりやすくなります。では、どうしたらよいのでしょうか。
まずは、長い時問、座らないことです。座って仕事をしている人は、ときどきいすから立ち上がり、体を動かしてください。また、座っているときは、なるべくよい姿勢で座ってください。
よい座り姿勢とは、骨盤を立ててお尻の真下にある2つの骨(座骨)で座ることです。すると、背骨もS字を描くようになります。
とはいえ、ふだん骨盤を後ろに倒して、仙骨で座っている人は、なかなか正しい姿勢で座れません。そこでお勧めしたいのが、「巻きタオル」です。
ヘルニアや変形性脊椎症による腰痛の再発を防ぐ
巻きタオルは、人問工学を研究されている早稲田大学名誉教の野呂先生が考案されたものです。私は野呂先生から教えていただき、実際に試してみました。
すると、骨盤を起こした座り方が簡単にでき、腰が楽になるのを実感できました。そこで、整形外科の患者さんにも、巻きタオルを勧めています。
巻きタオルは、座り方を補佐して、本来の正しい座り方にするものです。巻きタオルで仙骨を後ろから持ち上げて支えることで、骨盤が後ろに倒れるのを防ぐのです。
さらに、巻きタオルを使うと、骨盤の動きが安定し、腰椎の自然な前湾が促されます。巻きタオルの作り方と使い方は、左上の図をご覧ください。
ポイントは、お尻の後ろ半分だけを巻きタオルに乗せることです。お尻が全部乗っていると、骨盤が立たなくなります。
巻きタオルを使って座ると、骨盤が立った状態を意識できます。その姿勢で座り続けることで、よい姿勢で座る練習ができます。練習を重ねてよい姿勢が身につくと、必要な筋力も鍛えられて、巻きタオルがなくても骨盤を立てて座れるようになるのです。
この巻きタオルを勧めた患者さんから、腰痛が改善したといゝユ戸を多数いただいています。毎日、長時問いすに座ってパソコン作業をしているという女性(40歳) は、腰痛と肩こりがひどくて、私が診療する整形外科に来院されました。
そこで、巻きタオルの使い方を教えたところ、職場や自宅で実行。その結果、わずか数日で、腰痛や肩こりが消えたそうです。そのほか、骨粗鬆症で姿勢が悪く、慢性腰痛があった女性(70代)は、巻きタオルで姿勢がよくなり、腰痛も軽減しました。
なお、椎問板ヘルニアや変形性脊椎症の人は、急性期(痛みの強い時期)にはお勧めできません。しかし、痛みが落ち着いたら、再発防止になるので、ぜひやってみてぐださい。また、背骨が変形して固まっている場合、巻きタオルをすると、痛みが出ることもあります。試して痛みがあるなら、行わないほうがいいでしょう。
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