中国では薬膳として用いられていた
私は、1978年に千葉県で初めてキウイの栽培を始めました。当初はキウイを作ること以上に、売ることに苦労しました。何しろ当時、キウイは一部の専門店だけで扱われる珍しい果物で、1個数百円もする高級品。
キウイを見たことも食べたこともない人が多かったのです。どんな果物なのか知ってもらうために、地元の人たちに無料で配ったこともありました。ところが、今やキウイはすっかりポピュラーな存在になり、子供からお年寄りまで幅広い年代から愛される、人気の果物になりました。私の農園では、約1200坪の畑で5〜6トンのキウイを生産していますが、毎年10月末に販売を始めると3週問ほどで売り切れてしまいます。
自分で収穫を体験できるキウイ狩りも人気で、大勢のお客さまが来園されます。キウイ人気が高まった背景には、流通量が増えて価格が手頃になつたこと、キウイを作る大手会社が広報に力を入れたことなど、いろいろな要因があります。
しかし、なんといっても決め手は、味のおいしさでしょう。一度キウイを食べればファンになる人が多いのです。果物には珍しい、鮮やかな緑色をしていることも、人気にひと役買っていると思います。フルーツポンチなどで赤や黄色の果物の中にキウイが加わると、彩りがグンと華やかになります。
また、キウイが健康によい食べ物であることが広く知られるようになったのも、人気に拍車をかけたと思います。もともとキウイは中国が原産で、現地では薬膳に用いられてきた歴史があります。キウイはビタミンCや食物繊維など栄養素が豊富で、腸内環境の改善や便秘の解消、美肌効果など、健康な体づくりに役立ちます。私の地元にある高齢者が多く一人院されている病院でも、毎朝デザート・にキウイを出しているそうです。
高齢者は便秘になりがちですが、毎日キウイを食べることで、お通じもよくなるのではないでしょうか。もちろん、わが家でも年問を通じて毎日、キウイが食卓に登場します。朝食時に輪切りにしたキウイを食べることが多く、2歳になる孫もキウイが大好物。手づかみでおいしそうに食べています。
酸味が抑えられてジューシー
「こたつキウイ」のアイデアは、長年キウイとつき合ってきた私にとっても初耳でしたが、とてもいい方法だと思いました。キウイには酵素が豊富に含まれています。そのため、キウイのスライスやすりおろしを肉につけておくと、酵素の作用でタンパク質が分解されて肉が軟らかくなります。また、キウイのゼリーを作るときは、ゼラチンではなく寒天を使います。
ゼラチンは動物性タンパク質なので、キウイの酵素が働くと、うまく固まらないからです。キウイを温めることで、もともと豊富な酵素がいっそう活性化するという考え方に、「なるほど、うまい方法だな」とうならされました。
同時に、こたつキウイはキウイの追熟(果物を収穫後に一定期問置くことで完熟させること) にも向いていると思いました。キウイは樹上では完熟せず、もぎたてではおいしく食べることはできないのです。気温20℃ 以上の暖かい場所に10〜15日ほど置いておき、指で触って耳たぶくらいの軟らかさになつたときが、食べ頃。私の農園では、樹上で適度に熟したキウイを収穫し、暖かい場所でバナナやりんごと一緒に10日ほど保管して、追熟が始まった状態で出荷しています。
ちょうど収穫の時期だったので、こたつキウイと通常の方法で追熟させたキウイを食べ比べてみました。実際に食べてみた印象は、こたつキウイのほうが甘くジューシーで、食味がよいと感じました。ところが、糖度計で測定してみると、こたつキウイも従来どおりの方法で追熟させたキウイも糖度はほぼ同じで、13・4〜14度だったのです。これは意外な結果でした。食べた印象では、こたつキウイは糖度が15〜16度くらいと高めだと思ったからです。糖度は変わらないのに、こたつキウイのほうが甘いと感じた理由は、酸味にあります。人の味覚は、同じ糖度でも酸味が少ないと、あま味が増して感じられます。
こたつキウイは、温めることによって酸味が抜けたので、実際の糖度以上に甘く感じたのです。味の好みは人それぞれです。ただ、「キウイは酸っぱいから」と敬遠してしまう人が多いのは、残念なこと。こたつキウイは、酸味が苦手な人にも、薬効豊富なキウイをおいしく召し上がっていただける、とてもいい方法だと思います。
こたつキウイのやり方はこちら
- 用意するもの
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- やり方
- キウイを密閉後もしくはプラスチック製保存容器に入れ、口を閉じる。
- 1をこたつの中に2時間程度入れて温める。
自宅にこたつがない場合
- お湯で温める
- 密閉袋にキウイを入れ、なるべく空気を抜いて口を閉じる
- プラスチック製保存容器に45度程度より少し温かいくらいのお湯を注ぎ、1を入れる。
- 2のふたをする。
- バスタオルなどでくるんで保温し、1時間程度温める。